あの時間の話
「大学生ってこんなんでいいのかな」
麻雀牌をかき混ぜながら正面に座っていた友達が言った。時間は朝の4時を回ったが、まだ外は暗い。
「いいんじゃない?大学生なんてこんなもんでしょ」
左手に座っている友達が答える。
深夜にバイト終わりに集まった4人は10月だというのに炬燵を出して牌を詰む。自分以外の三人が吸う煙草の煙が部屋に漂っている。
大学生になって何を成し遂げたか?なんて聞かれたら私は何も答えることができない。そもそも何かを成し遂げられるような大学生なんてほんの一握りだろう。大学の授業はつまらないものが大半で、やる気なんて起きたもんじゃない。
大きく盛り上がるわけでもない会話が終始繰り広げされながら、微睡みの様な空間にいる。バイト後で疲れている筈なのに不思議と眠さはない。髪をバッサリ切った友達がメンソールの煙草を噛む音が聞こえた。
誰も今日大学に行くつもりがない。いや、ない訳ではないだろう。多分休んでもいいと思っている。
7割方働いてない頭の残りの2割は手を作るのに必死だ。残りの1割で明日は厳しい教授の授業だから、行かなければ行けないとは考えている。でもなんとなくわかる。きっと私は起きれない。起きるつもりもないのだろう。
朝6時を回り、全くつまらないギャグで大爆笑してしまう。南場の私の親が流れた。
「腹減ってきたな」
左手の友達が呟く。
「マック行きたくない?」
こんな提案もしてしまう。
「行きたい!」
左手と右手に座る友達の声がかぶる。
ニコニコしながら部屋を出て車に向かう。流行曲を流しながら車は進む。外ではバスを待つサラリーマンや学校へ通う中学生の姿が見える。
目立って美味しい訳でもないハンバーガーを食べながら私たちは笑っている。贅沢だなと思う。こんな無鉄砲に時間を使えるのは今だけだ。大学生の今しかない特権だ。
この時間の私たちは無敵だ。
シャワーで染み付いた油と煙草の匂いを洗い流してベッドにもぐる。くたくたに疲れた私は髪も乾かしてない。今日はきっと大学に行かない。なんとなく可笑しい。ずる休みはいつだって楽しくて寛大でこちらを受け入れてくれる。授業の時間まで残り4時間。起きたら授業終わってたりして。心地よいベッドの中で私は目を閉じた。
大学生に朝はこない。